さて、話を進めさせていただきます。
鬼滅の刃第23巻では、当然大ボスである「鬼舞辻無惨」との戦いと、その後の隊士たちの行く末が濃厚に描写されます。
「最終話、情報量多いよ!」と中学生の娘から漏れ伝え聞いてはおりましたが、さすが人気絶頂時に連載を終了させる、在りし日の山口百恵さんがマイクをそっと置く姿を彷彿とせざるを得ない、真っ赤なポルシェでエンディングに突っ走る疾走感、ドライブ感、グルーヴ感満載な膨大な文字数を抱え込んだストーリーの中、「どこかに組織マネジメント論みたいなネタ落ちてねぇかなぁ」という斜めな読み方をする読者(俺)の目に飛び込んできたのは、蛇柱と主人公が無惨にふっとばされて取り逃がそうかというピンチに飛び出してきたイノシシ頭くん・金色頭くん、そして息を吹き返した主人公くんによる集団による連続攻撃の姿でした。
単なる連携プレー、というだけではなく、読者(俺)の目に止まったのは、それぞれのメンバーが自らの型を徹底して繰り返し続ける姿、その型が、時々生じる味方のスキを漫画のように(漫画だけど)見事にカバーし続けていく姿でした。
金色の頭くんは「霹靂一閃」を都合3回+オリジナルブロー「火雷神(ほのいかづちのかみ)」1発、イノシシ頭くんは「切細裂き→切細裂き→狂い裂き→喰い裂き→乱杭咬み→狂い裂き」と型にはまった得意技を6発、主人公くんは「灼骨炎陽→烈日紅鏡→火車→輝輝恩光→日暈の龍・頭舞い→飛輪…→炎舞→碧羅の天→幻日虹→円舞→斜陽転身→日暈の龍・頭舞い→烈日紅鏡→陽華突」と、22巻でせっかく悟った「円舞→碧羅の天→烈日紅鏡→幻日虹→火車→灼骨炎陽→陽華突→飛輪陽炎→斜陽転身→輝輝恩光→日暈の龍・頭舞い→炎舞」の「十二の型」を「繰り返すことで円環を成し十三個目の型になる」という気づきを秒で葬り去る、見事な「型破れ」なオリジナルコンボを叩き込み、その後の「柱」達の攻撃、「隠し」達の滅私奉公、そして止めに「太陽」で無惨をやっつけています。
昭和のヒーローであれば、主人公が今までに見たこともない、土壇場で編み出した(もしくは漫画の神の啓示のようにいきなり閃いた)新しいフィニッシュホールドを独りで叩き込んで敵役を葬り去ったことでしょう。もしくは、信頼のパートナーとのコンビプレーで、翼くんと岬くんの「ツインシュート」のような、キン肉マンとキン肉マングレートの「マッスル・ドッキング」のような、いずれにしても、斬新で初お目見えとなるような一発逆転技で勝つ、というパターンが多かったように読者(俺)は記憶しているわけですが、対して大正に生きる令和のヒーロー、「鬼殺隊」の皆さんはどうでしょうか。
一つの大きくて複雑な課題(=無惨)に対して、玉代さんやらしのぶさんやらの毒薬も含めると、とんでもなく多くのメンツが、それぞれの得意とする「型」、すなわち「特徴」を活かし合って、少しずつ少しずつ課題(=無惨)を削りとり、自分たちもすり減りながらも、総力を一点集中して最終的な成功(勝利)を勝ち取っていますね。
まさにこのあたりの「サクセスストーリー」のあり方が、今の時代の若年層が想起する「チームワーク」「リーダーシップ」を描写しているのかなぁ、ってのが、無理やり「組織マネジメント論のメタファー探しに漫画を読んでいる」「読者(俺)」の初見の感想でした。
つらつらつらつらと、文字数が多いエントリーとなった完全ネタバラシの今回であり、流石に戦いのあとの描写まで文字起こしするほど、読者(俺)の脳の持久力はございませんので、これにて一旦校了とさせていただきたいと思います。
それにしても、これだけ多くの熱狂を生み出すことができるって、やっぱりとっても素晴らしい。
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