2 目的によって数字を使い分ける
閑話休題
で、件の記事の内容を読んでみると、一番のウリとなっている「65%」に触れている部分としては
イングランド公衆衛生サービス(PHE) 同65%増(イギリス株感染者9万2207人と同数の他株感染者が調査対象)
とか
英イーストアングリア大学ノリッジ医学部のポール・ハンター教授(疫学・公衆衛生)は「致死率の増加の可能性についての結論は、本質的には同じデータを使って異なるグループによって行われた分析から導き出される。異なる分析の間で推定される死亡リスクの増加にはかなりの違いがあるものの、大半が死亡リスクの増加を示している」と分析する。
そして「エビデンスの質が最も高いと考えられるイングランド公衆衛生サービス(PHE)の分析結果は基本的にイギリス株に感染すれば他の株より28日以内に死亡する可能性が65%高いことを意味している。本当に残念な発見だが、新規感染者数が急速に減少していることを考えると、今後数週間で死亡者数が減少し始める可能性がある」と締めくくった。
との記載がありますが、「何を基準として”65%”増加したのか」という部分が今一分かりづらいなぁ、と感じました。
で、「この65%が意味することは何か?」ということを類推するために文中を探してみると、同じ記事中で、数値は異なりますが「30%アップ」という数字を使った文があったので読んでみました。すると、
60歳の場合、他の株に感染すると1000人に10人が死亡するのに対して、イギリス株では1000人に13人が死亡する恐れがあるということだ
という”数理モデルのスペシャリスト”の言を引用し、
60歳なら致死率は30%アップするということだ
と要約していました。
なるほど、出てくる数字を計算すると、
10÷1000=1%
13÷1000=1.3%
1.3%÷1%=130%
なので、たしかに「30%アップ!」という表現は、計算上は間違いではありません。
でも、この表現、仮に「起きている物事の実態を説明し、人々の行動決定に貢献する」ということが記事を投稿する目的だった場合、最適な指標と言えるでしょうか?
主観ではありますが、「”イギリス株”にどれだけ注意を払うべきか」という判断材料として情報を伝える為であれば、1.3%-1.0%=0.3(パーセント)ポイントアップのほうが、より伝えるべき情報をわかりやすく表現しているように感じます(あくまで主観です)
ただし、「リスクが0.3ポイント増えたよ」って記事を書いても、誰も興味を持つことはないでしょう。記事を読んでもらい、PVを稼ぎ、原稿料アップ!させる為だったら、「30%アップ!」が、原稿料アップ!には合目的です。さすが自称”ジャーナリスト”です。感服いたします。